なぜ昔のUR団地には巨大な給水塔があった?団地の水を支えた設備の秘密

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昔のUR団地を歩いていると、ときどき巨大な塔のような建造物を見かけます。

円筒形だったり、キノコのような形だったり、団地によってデザインはさまざまです。

これは「給水塔」と呼ばれる設備です。

今では使われなくなったものも多いのですが、かつては団地で暮らす人たちの水道を支える、とても重要な施設でした。

では、そもそも水道管があるのに、なぜわざわざ高い塔を建てる必要があったのでしょうか。

調べてみると、そこには昔の集合住宅ならではの事情がありました。

給水塔は団地の各家庭に水を送るための設備だった

給水塔の役割を簡単に言えば、

高い場所に水をため、その高さを利用して各家庭へ水を送ること

です。

昔の集合住宅では、水道本管の水圧だけでは、建物の上階まで十分な水を届けることが難しい場合がありました。

そこで、水道水をいったん受水槽にため、ポンプを使って高い場所にある水槽へくみ上げます。

その後は、高い場所から低い場所へ水が流れる力を利用して、各住戸へ給水します。

この仕組みを使えば、5階建てなどの集合住宅にも安定して水を届けやすくなります。

日本住宅公団は設立当初から給水塔をつくっていた

現在のUR都市機構の前身である日本住宅公団は、1955年に設立されました。

興味深いことに、その1955年にはすでに公団初の給水塔が完成しています。

つまり日本住宅公団にとって、住宅を大量に建てることと同時に、

「そこに住む何千人もの人へ、どうやって水を供給するか」

という問題も、最初から重要な課題だったわけです。

団地というのは、単に住宅棟を並べれば完成するものではありません。

水道、下水、道路、電気、商店、公園など、大勢の人が生活するためのインフラまでまとめて整備する必要があります。

給水塔は、そうした「小さな街」としての団地を支える設備の一つでした。

なぜわざわざ高い塔に水を上げたのか

ここで疑問なのが、

「水をポンプで各家庭へ直接送ればいいのでは?」

ということです。

現在では実際に、ポンプの圧力で直接各住戸まで水を送る方法が広く使われています。

しかし昔は、現在ほどポンプの制御技術が発達していませんでした。

そこで一度高い場所まで水をくみ上げてしまえば、その後は重力を利用して給水できます。

この方法なら、水圧を比較的安定させながら、多くの住戸へ水を送ることができます。

団地の給水塔は、高い場所に水をためるためにあの独特な形になっていたわけです。

給水塔の中が全部水だったわけではない

巨大な給水塔を見ると、

「この塔の中全部に水が入っているのだろうか?」

と思うかもしれません。

しかし、多くの場合はそうではありません。

水をためる水槽は塔の上部にあり、その水槽を高い位置に置くために柱や構造物で支えています。

重要なのは水の量だけではなく、水をどれだけ高い位置に置くかです。

水面と各住戸との高低差があることで、水を下へ押し出す力が生まれます。

そのため、遠くから見ると非常に大きな塔でも、内部すべてが巨大な水槽というわけではありません。

停電してもすぐに水が止まらないという利点もあった

高い場所に水をためておく方式には、もう一つ利点があります。

それは、停電でポンプが止まっても、高い場所の水槽に残っている水については重力で給水できることです。

もちろん水槽の水を使い切れば、その後は給水できなくなります。

それでも、ポンプだけで常時圧送する方式とは違い、停電した瞬間に必ず水が止まるとは限りません。

また、貯水槽に水が残っていれば、断水や災害の際に一定量の水を確保できるという特徴もあります。

昔の集合住宅にとっては、こうした貯水機能も大きな意味がありました。

それなら今でも給水塔を使えばいいのでは?

ここまで見ると、

「給水塔は便利なのに、なぜ最近のマンションではあまり見ないのか?」

と思います。

大きな理由の一つが、給水ポンプの進歩です。

昭和50年ごろになると、モーターの回転を調整しながら必要な水圧をつくる技術が発達しました。

これによって、高い場所に巨大な水槽を置かなくても、ポンプの圧力で各住戸へ直接水を送る方式が使いやすくなりました。

さらに現在では、水道本管の水圧を利用しながら、不足する圧力だけを増圧ポンプで補う「直結増圧給水方式」も広く使われています。

こうなると、大きな給水塔を維持する必要性は次第に小さくなっていきます。

給水塔には維持管理も必要だった

水をためる設備である以上、衛生管理も必要です。

受水槽や高置水槽は、定期的な清掃や点検をしなければなりません。

管理状態が悪ければ、水が濁ったり、においが付いたりする可能性もあります。

また、大きな給水塔そのものにも、

・構造物の点検
・配管の維持管理
・ポンプの修理や交換
・水槽の清掃
・老朽化対策

などが必要になります。

巨大な設備だけに、長期間使い続けるにはそれなりの維持費がかかります。

今のURでは給水塔を使わない方式への改修も進んでいる

古い団地では現在でも給水設備の更新が行われています。

実際にURでは、従来の高架水槽方式から、高架水槽を使わずポンプで直接圧送する方式へ切り替える工事も行われています。

こうした改修によって、昔は団地の水道に欠かせなかった給水塔が、役目を終えるケースも増えています。

つまり、

「団地がなくなったから給水塔がなくなる」

だけではありません。

団地そのものは残っていても、給水方式だけが新しい方式へ切り替わることがあるのです。

役目を終えた給水塔は撤去されることもある

給水設備として使わなくなった給水塔は、そのまま永久に残されるとは限りません。

老朽化や団地再生に合わせて撤去されるケースがあります。

例えば福岡市の星の原団地では、団地のシンボルだった給水塔が役目を終え、2024年12月に撤去されました。

神奈川県の浜見平団地でも、1964年の団地建設時から地域のシンボルだった給水塔が、団地再生によって役目を終え、解体されています。

給水設備としては不要になっても、何十年もその場所に立ち続けた給水塔は、住民にとって団地の風景そのものになっていたのでしょう。

給水塔が「団地のシンボル」になった理由

昔の給水塔には、設備以上の存在感があります。

団地の住宅棟よりも高く、遠くからでも見えるため、

「給水塔が見えたら家に帰ってきた」

という目印にもなります。

URが紹介している団地の中にも、給水塔を「団地のシンボル」として扱っているところがあります。

団地によって形やデザインが違うのも面白いところです。

水をためるという機能は同じでも、塔の形にはそれぞれ個性があります。

古い団地を見て回るときは、住宅棟だけでなく給水塔にも注目すると、団地ごとの違いが見えてきます。

築古URに住んでいると水道設備も気になる

私自身、築40年を超えるUR賃貸団地に4年以上住んでいます。

普段は蛇口をひねれば普通に水が出るので、その水がどうやって部屋まで届いているのか意識することはほとんどありません。

しかし築年数の古い集合住宅では、建物そのものだけでなく、その裏側にある給水設備も長い年月を経ています。

古い団地について調べていくと、住宅棟だけを新しくすれば済むわけではなく、

水道、配管、ポンプ、下水などのインフラをどう更新するか

という問題もあることが分かります。

給水塔の変化は、築古団地がどのように設備を更新しながら使われ続けているのかを知る、一つの分かりやすい例だと思います。

昔のUR団地を見たら給水塔を探してみる

古い団地を訪れたとき、少し離れた場所から団地全体を眺めてみてください。

住宅棟の間から、円筒形やキノコ型の高い建物が見えることがあります。

それが現役の給水塔なのか、すでに役目を終えたものなのかは団地によって異なります。

しかし、昔の団地で多くの家庭に水を届けるために重要な役割を担っていたことは同じです。

今では当たり前になった水道も、何千戸もの集合住宅へ安定して届けるために、さまざまな工夫が積み重ねられてきました。

まとめ|給水塔は昔の団地を支えた重要なインフラだった

昔のUR団地にある巨大な給水塔は、単なる団地の飾りではありません。

水道水を高い場所にため、その高さを利用して各住戸へ安定して水を送るための設備でした。

日本住宅公団では設立当初から給水塔が造られ、その後長い間、多くの団地の暮らしを支えてきました。

しかしポンプ技術や直結給水方式が発達したことで、巨大な給水塔を必要としない団地も増えています。

役目を終えた給水塔が撤去されると、団地の風景も大きく変わります。

築古URを見るときは、建物だけでなく、こうした昔のインフラにも目を向けてみると面白いと思います。

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