古いUR団地にエレベーターは後付けできる?5階建て団地の意外な改修方法
古いUR団地を見ていると、5階建てなのにエレベーターがない建物をよく見かけます。
特に昭和40年代ごろに建てられた団地では、階段だけの5階建て住棟は珍しくありません。
若いうちはそれほど気にならなくても、年齢を重ねたり、重い荷物を持ったり、ベビーカーを使ったりするようになると、毎日の階段はかなり大きな負担になります。
そこで以前から気になっていたことがあります。
「こういう古い5階建て団地に、あとからエレベーターを付けることはできないのだろうか?」
調べてみると、答えは「できる」です。
実際にURでは、既存の古い住棟にエレベーターを後付けした事例があり、さらに複数の方式まで開発されています。
5階建て以下のURにはエレベーターがない住棟も多い
UR都市機構自身も、5階建て以下の団地ではエレベーターが設置されていない住棟があることを案内しています。
階段だけの建物では、買い物帰りに重い荷物を持って上がったり、大型家具や家電を搬入したりするときに負担が大きくなります。
一方でURは、既存住棟を改修してエレベーターを設置している団地もあると説明しています。
つまり、
「古い5階建てだからエレベーターは一生付けられない」
というわけではありません。
後付けエレベーターには複数の方法がある
では、すでに完成して何十年も経っている建物に、どうやってエレベーターを付けるのでしょうか。
UR関連施設の「スクエアJS」では、昭和40年代に建てられた集合住宅を想定した後付けエレベーターが紹介されています。
大きく分けると、
・階段室側に設置する方式
・バルコニー側に設置する方式
があります。
建物の構造や敷地条件によって、適した方法が変わります。
階段室側にエレベーターを付ける方法
比較的イメージしやすいのが、既存の階段室の外側にエレベーターを増築する方法です。
スクエアJSで紹介されている後付けエレベーターでは、工事期間をなるべく短縮するため、エレベーターの筒にあたる「エレベーターシャフト」の部材を工場で製作し、現場で積み上げる工法も開発されています。
住民が生活している建物を改修する以上、長期間にわたって大規模工事を続けることはできません。
そこで、できるだけ工場で部材をつくり、現場工事を短くする工夫がされているわけです。
ただし「エレベーターを付ければ完全バリアフリー」とは限らない
ここが、後付けエレベーターの面白いところです。
古い階段室型の団地では、各階の玄関前ではなく、階段の途中にある踊り場にエレベーターを停止させる方式があります。
この場合、エレベーターを降りたあと、自宅まで半階分ほど階段を上る、または下りる必要があります。
つまり、
階段の負担は大幅に減るものの、完全に段差がなくなるわけではありません。
建物を丸ごと建て替えずにエレベーターを追加するための現実的な方法ともいえます。
京都の男山団地では実際に後付けされている
実例として分かりやすいのが、京都府八幡市の男山団地です。
男山団地は1970年代に建てられた大規模なUR団地で、5階建てを含む多くの住棟があります。
URの資料によると、団地内のバリアフリー化の一環として、一部の5階建て住棟にエレベーターが後付けされました。
ただし、このエレベーターは各階に直接止まる方式ではありません。
2階と3階の間、4階と5階の間に停止する方式です。
そのため、自宅の階によってはエレベーターを降りたあとに階段を使います。
それでも、1階から4階や5階まで全て階段で上ることを考えれば、負担はかなり軽減されます。
バルコニー側に付ける方法もある
さらに、バルコニー側にエレベーターを設置する方式も研究・実用化されています。
この方法では、建物の外側に新しい動線をつくることで、階段室の構造にあまり左右されずに住戸へアクセスできる可能性があります。
スクエアJSでは、実際にバルコニー側へ後付けされたエレベーターを見ることができます。
古い集合住宅に後付けすると聞くと、
「建物の横にエレベーターを1本付ければ終わり」
という単純な工事を想像しがちですが、実際には、住戸までどう移動するかまで含めて設計する必要があります。
既存の階段そのものを撤去した実験まである
もっと大胆な改修例もあります。
東京都西東京市の旧ひばりが丘団地では、URが既存住宅を再生する「ストック再生実証実験」を行いました。
その中の一つでは、
既存の階段室を撤去してエレベーターを設置し、さらに外廊下を新設する
という大規模な改修が行われています。
これによって、エレベーターから各住戸まで段差なしでアクセスできるようにしました。
つまり技術的には、
古い階段室型の団地でも、住棟そのものを大きく改造すれば本格的なバリアフリー化が可能
なのです。
エレベーターを付けるだけでも建物の大改造になる
ただし、後付けエレベーターは簡単な工事ではありません。
エレベーター本体を設置するだけではなく、
・既存建物の強度
・耐震性
・廊下や階段との接続
・敷地の余裕
・避難経路
・工事スペース
など、さまざまな条件を確認する必要があります。
URの既存住棟改修事例でも、工事前に躯体の劣化状況や耐久性を調査し、改修後の耐震性まで確認しています。
したがって、同じ5階建て団地でも、
「この団地には付けられるが、別の団地では難しい」
ということは十分考えられます。
なぜすべての5階建てURに付けないのか
ここまで読むと、
「技術的に可能なら、エレベーターのない5階建てUR全部に付ければいいのでは?」
と思うかもしれません。
しかし現実には、それほど単純ではないでしょう。
後付けには大規模な工事と費用が必要です。
さらに、建物の残りの使用期間、住戸数、居住者構成、建て替え予定、敷地条件なども考慮する必要があります。
築年数のかなり古い建物に多額の費用をかけて改修するのか、それとも将来的に建て替えるのか。
これはエレベーターだけではなく、築古団地全体の再生に関わる難しい問題です。
高齢化する団地ではますます重要な問題になる
私自身、築40年を超えるURに住んでいますが、古い団地ほど高齢の住民を見かける機会も多くなります。
若いころは普通に上れていた階段でも、10年、20年と住み続ければ負担は変わります。
特に4階や5階では、
買い物、通院、ゴミ出しなど、日常のちょっとした外出にも階段が関係してきます。
部屋の設備を新しくすることも大切ですが、長く暮らし続けるという意味では、建物へのアクセスそのものも重要な住宅設備の一つだと思います。
エレベーターなしのURを内見するときに確認したいこと
これから古いURを探す方は、エレベーターの有無だけではなく、次の点も確認しておくとよいでしょう。
・何階の部屋なのか
・階段の幅や勾配はどうか
・買い物の荷物を持って上れるか
・将来も長く住む予定なのか
・同じ団地にエレベーター付き住棟があるか
・後付けされたエレベーターは各階に停止するか
特に「エレベーターあり」と書かれていても、すべての階に止まるとは限りません。
男山団地のように、一部の階の間に停止するタイプもあります。
物件を選ぶ際は、実際にどこに停止するのかまで確認した方が安心です。
まとめ|古いURでもエレベーターは後付けできる
エレベーターのない古い5階建てURでも、技術的には後からエレベーターを設置できます。
実際にURでは、
・階段室側への増築
・バルコニー側への増築
・階段室を撤去して外廊下とエレベーターを新設
といったさまざまな方法が試されています。
ただし、後付けしただけで全住戸が完全なバリアフリーになるとは限りません。
既存建物を使い続けながら改修する以上、建物の構造や費用との折り合いを付ける必要があります。
それでも、何十年も前に建てられた団地に新しい設備を追加して使い続ける技術がすでに存在していることは、築古URを見るうえで興味深い点です。
「古いから建て替えるしかない」のではなく、今ある建物をどこまで改修して使い続けられるのか。
エレベーターの後付けは、これからの団地再生を考えるうえでも重要なテーマになりそうです。